論文至上主義をゼロから考える〜その薬の効果はどのくらい?〜

猫好きの猫になりたい薬剤師です。どう医療に関わっていくか等々、薬剤師の一人である自身の感じたこと、考え方を投稿していきます。備忘録的な役割が大きいです。本ブログの記載内容については一切の責任を負えません。原著論文を参照して下さい。また情報の二次利用につきましては各々の責任でお願いいたします。記載内容に誤りがありましたら、ご指摘いただけますと幸いです。お問い合わせはこちらまで→【noir.van13@gmail.com】

日本人2型糖尿病患者における低用量アスピリンの使用はアテローム性動脈硬化症の初発を予防できますか?(JAMA 2008: JPAD trial; Free)

www.ncbi.nlm.nih.gov

PMID: 18997198

ClinicalTrials.gov No: NCT00110448

改訂あり:テーブル内の数値に誤りがあり、2017年2月までに本文修正が 2回あったようです。

 

The Japanese Primary Prevention of Atherosclerosis With Aspirin for Diabetes ( JPAD) trial.

 

⌘ 結論

日本人 2型糖尿病患者のアテローム動脈硬化症に対するアスピリンの一次予防効果は無かった。

 

 

f:id:noir-van13:20170314002728p:plain

Additional Figure : Risk of Bias Table made by the RobotReviewer: Automating evidence synthesis

 

→RCT だったので RobotReviewer を使用してみました、各 Risk of Biasは "low" のようです。Google 翻訳もそうですが科学の進歩には驚かされます。

 

 

⌘ 背景

糖尿病は心血管イベントの強力な危険因子である。Framingham Heart Study において、糖尿病は男女それぞれ 1.5と 1.8の冠動脈疾患のオッズ比と関連し、男性と女性の脳卒中の相対リスクはそれぞれ 1.4と 1.7であると報告されている。 糖尿病患者は、健常人よりも心血管イベントを発症するリスクが 2〜4倍高いことも報告されている。
   過去の報告では、心血管イベントの二次予防戦略としてアスピリン療法が確立されており、研究成果がいくつか報告されている。また臨床ガイドラインでは、冠状動脈疾患の危険因子を有するヒトは、一次予防および二次予防のためにアスピリンを投与することが推奨されている。

   米国糖尿病学会は、特に心血管リスクが高い(40歳以上、冠状動脈疾患、高血圧、喫煙、脂質異常症、またはアルブミン尿症等の家族歴など、リスク要因を有する)糖尿病患者の一次予防戦略として、アスピリンが禁忌で無い限り、積極的な使用を推奨している。しかし一次予防におけるアスピリン臨床試験データは限られている。

   アスピリンの一次予防効果については、いくつかの大規模臨床試験のサブグループ解析で報告されている。しかし糖尿病のサブグループ解析においては、パワー不足、つまり症例数が不十分であるため心血管イベントの有意な抑制効果は示されていない。したがって、糖尿病患者を対象に、アスピリンの一次予防効果を検討する試験が求められている。
   The Japanese Primary Prevention of Atherosclerosis With Aspirin for Diabetes (JPAD) 試験は、2型糖尿病患者における低用量アスピリン使用が、アテローム動脈硬化症の一次予防に有用であるか否かを検討した。

 

 

⌘ PICOT

P: 30~85歳の 2型糖尿病患者 2539例(男女、BMI:24、日本の163施設)

除外基準: 心電図で ST低下や ST上昇、または病理学的 Q波; 冠状動脈造影で冠動脈心疾患の病歴; 脳梗塞くも膜下出血くも膜下出血、および一過性虚血発作からなる脳血管疾患の病歴; 治療を必要とする動脈硬化性疾患の病歴; 心房細動; 妊娠; アスピリン、チクロピジン、シロスタゾール、ジピリダモール、トラピジル、ワルファリン、およびアルガトロバンの使用; 重度の胃または十二指腸潰瘍の病歴; 重度の肝機能障害; 重度の腎機能障害、およびアスピリンに対するアレルギーを有す患者

I: 81 mg あるいは 100 mg アスピリン 1日 1回投与(1262例)

C: 無し(1277例) →なぜプラセボ対象ではないのか?後述します。

O: Primary --- アテローム動脈硬化(①突然死;  ②冠状動脈あるいは脳血管、胸部大動脈を原因とする死亡;  ③非致死的な急性心筋梗塞; 不安定狭心症;  新規の労作性狭心症;  ④非致死的な虚血性あるいは出血性脳卒中;  ⑤一過性脳虚血発作;  ⑥非致死的な大動脈あるいは末梢血管疾患(閉塞性動脈硬化疾患や大動脈乖離、腸管膜動脈血栓症   上記 6つの複合

 Key Secondary --- Primary endopointを含めたあらゆる原因による死亡;  有害事象(胃腸障害および出血性脳卒中以外の全ての出血イベント)

T: ランダム化比較試験(PROBE法);  予防効果;  試験期間 4.37 年 (95% CI, 4.35-4.39)

 

 

⌘ ランダム割り付けされているか?(観察者バイアスはないか?)

→乱数表を用いた非層別単純ランダム割り付けが行われている(コンピュータを用いた疑似乱数だが問題無しと判断した)。

The randomization was performed as nonstratified randomization from a random number table.

 

 

⌘ ブラインドされているか?(マスキングにより観察者バイアスは抑えられているか?

→オープンラベル。アウトカムは第 3者委員会により評価された。狭心症TIAのイベント数が気になる。

All potential primary end points, secondary end points, and adverse events were adjudicated by an independent committee on validation of data and events that was unaware of the group assignments.

 

 

⌘ 隠蔽化されているか?(選択バイアスはないか?)

→封筒法を採用。隠蔽化concealment されていると判断した(封筒が透けていないことを祈る)。

The study center prepared the sealed envelopes with random assignments and distributed them by mail to the physicians in charge at the study sites. 

 

 

⌘ プライマリーアウトカムは真か?明確か?

真であると判断した。ただし複合エンドポイントである点を考慮する必要がある。

 

 

⌘ 交絡因子は網羅的に検討されているか?

→Table 1及び本文より、可能な範囲で検討されていると判断した。使用薬剤は以下の通り。

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(本文より一部抜粋)

 

⌘ Baseline は同等か?

→Table 1 より概ね同等であると判断した。

(個人的には糖尿病罹患期間と神経障害関連疾患にやや偏りがあると感じた)

 

 

 ⌘ ITT 解析されているか?

→されている。Table 1、Figure 1、Figure 2の数字も問題なし。

 

 

⌘ 追跡率(脱落)はどのくらいか?結果を覆す程か?

→脱落数は両群とも同様。ITT解析の為、追跡率は100%と判断。結果については後述。

(per protocol analysis の場合の追跡率は以下の通り。一応算出。)

アスピリン投与群:1165/1262 =92.3% (7.7%)

対照群:1181/1277 =92.5% (7.5%)

 

 

⌘ サンプルサイズは充分か?

→計算されており、2539例と症例数も充分。

The incidence of cardiovascular death, myocardial infarction, and cerebrovascular events were 7.5, 7.5, and 8.0 events per 1000 Japanese diabetic patients per year, respectively.

Based on a 2-sided level of .05, a power of 0.95, an enrollment period of 2 years, and a follow-up period of 3 years after the last enrollment, we estimated that 2450 patients would need to be enrolled to detect a 30% relative risk reduction for an occurrence of atherosclerotic disease by aspirin.

 

内的妥当性については RobotReviewer の結果と概ね同様であった。

 

 

⌘ 結果は?

本文より以下、Table 2および Figure 2を引用

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Primary endpoint(アテローム動脈硬化症のイベント数):

アスピリン投与群 68例5.4%;13.6例/1000人・年)、対照群 86例6.7%;17.0例/1000人・年)で両群間に有意差は認められなかった。

ハザード比は 0.80(95% CI: 0.58~1.10, p=0.16) 。also see above Figure 2.

 

→致死的な冠動脈+脳血管イベント:

アスピリン投与群で 1例(脳卒中)、対照群で 10例(心筋梗塞 5例;  脳卒中 5例)。

ハザード比は 0.1095% CI: 0.01~0.79, p=0.0037)。

 

→冠動脈疾患(致死的+非致死的):

アスピリン投与群で 28例、対照群で 35例。

ハザード比は 0.8195% CI: 0.49~1.33, p=0.40)。

 

→致死的な心筋梗塞

アスピリン投与群で 0例、対照群で 5例。

ハザード比は計算できず

 

 

→非致死的な心筋梗塞

アスピリン投与群で 12例、対照群で 9例。

ハザード比は 1.3495% CI: 0.57~3.19, p=0.50)

 

→不安定狭心症

アスピリン投与群で 4例、対照群で 10例。

ハザード比は 0.495% CI: 0.13~1.29, p=0.13)

 

 

→安定狭心症stable angina(ここは誤字だと思われる。Methodsでは newly developed exertional anginaで、試験中新たに増悪した労作性狭心症である。):

アスピリン投与群で 12例、対照群で 11例。

ハザード比は 1.195% CI: 0.49~2.50, p=0.82)

 

 

→脳血管疾患(致死的+非致死的):

アスピリン投与群で 28例、対照群で 32例。

ハザード比は 0.8495% CI: 0.53~1.32, p=0.44)

 

 

→致死的な脳卒中

アスピリン投与群で 1例、対照群で 5例。

ハザード比は 0.2095% CI: 0.024~1.740, p=0.15)

 

→非致死的な脳卒中

①虚血性

アスピリン投与群で 22例、対照群で 24例。

ハザード比は 0.9395% CI: 0.52~1.66, p=0.80)

②出血性

アスピリン投与群で 5例、対照群で 3例。

ハザード比は 1.6895% CI: 0.40~7.04, p=0.48)

 

 

 

→一過性脳虚血発作

アスピリン投与群で 5例、対照群で 8例。

ハザード比は 0.6395% CI: 0.21~1.93, p=0.42)

 

 

→末梢血管疾患

アスピリン投与群で 7例、対照群で 11例。

ハザード比は 0.6495% CI: 0.25~1.65, p=0.35)

 

 

→全死亡:

(本文に記載あり)

アスピリン投与群で 34例、対照群で 38例:HR 0.90;0.57~1.14(p=0.67)。

 

→有害事象

脳出血と胃腸出血は両群同様であった、との記載が本文中にあるが、どう見てもトータルのイベント数はアスピリン投与群の方が多い(本文より Table 3を引用)。

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→サブ解析
65歳以上(両群の合計 1363例: アスピリン投与群 719例、対照群 644例)において、アテローム動脈硬化症は、アスピリン投与群で 45例(6.3%)、対照群で 59例(9.2%)と両群間に有意な差があった。一方、65歳未満では有意差はなかった。

ハザード比は 0.68(95%CI: 0.46~0.99, p=0.047)。

 

⌘ 考察

日本人 2型糖尿病患者のアテローム動脈硬化症に対するアスピリンの一次予防効果は認められなかった。

   サブ解析にて 65歳以上に有用である可能性が示唆されたが、あくまで仮説生成。

   本試験はプラセボ対象ではない。理由は本文に記載されていた(The Japanese Pharmaceutical Affairs Law limits the use of placebo in physician-initiated studies because it is an unapproved medicine. )。医師主導の治験においては、薬事法(現:薬機法)で承認されていないプラセボ薬は使用できなかったとのこと。訳のわからない理由である。

   アスピリン投与群で 97例、対照群で 96例の脱落があった。また各アウトカムのイベント数は、海外と比較するとかなり少ない。したがって脱落した症例が試験を完遂した場合、結果を覆す可能性は充分にあると考えられるが、脱落しなかったとしても、このぐらいのイベント数かもしれない。あるいは Baseの治療薬の影響が大きいのかもしれない。

   血圧は、アスピリン投与群で平均 136±15 / 77±9、対照群で 134±15 / 76±9 とコントロール良好。脂質パラメータは、総コレステロールアスピリン投与群 202 vs. 対照群 200) 、中性脂肪(135 vs. 134)、HDL-cho(55 vs. 55)、どれも両群間で同様。上記の値をもとに算出した LDL-cho(120 vs. 118.2)、LH比(2.18 vs. 2.15)も同様であった。

   オープンラベルであるが狭心症をはじめとするソフトエンドポイントに差異は無かった。

   個人的には JPAD2や他の国内臨床試験と比較してみたい試験である。

ポリファーマシーは必要悪?(BMJ 2013:Free)

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www.ncbi.nlm.nih.gov

PMID:24286985

 

⌘ 私的背景

ポリファーマシーというコトバが一人歩きしているのは言うまでもない。個人的には "5剤以上使用している" ただの状態と捉えている。

2013年に BMJへ掲載された『Polypharmacy: a necessary evil』という何ともキャッチーな論文に出逢ったので読んでみた。

 

⌘ 以下、本文

ポリファーマシーというコトバが最初に医学文献に登場したのは 150年以上前である。この問題には緊急に対応する必要があると King’s Fund※のレポートにて報告されている(King’s Fund. Polypharmacy and medicines optimization: making it safe and sound. 2013. https://www.kingsfund.org.uk/)。
 

イングランドにおける 1人あたりの平均処方薬剤数は、2001年の 11.9から 2011年の 18.3と、過去 10年間で実に 53.8%増加した(Health and Social Care Information Centre. Prescriptions dispensed in the community, statistics for England, 2001-2011. 2012. http://content.digital.nhs.uk/catalogue/PUB06941)。

 

またスコットランドの 300,000人以上の患者を対象とした調査では、1995年から 2010年の間に 5種以上の薬剤を服用する患者の割合が 12%から 22%に増加し、10種以上では 1.9%から 5.8%に上昇した(see below Figure)
高齢者の場合、この数値はさらに高く、65歳以上の患者 6人に 1人が 10以上の薬剤を飲んでいるThe rising tide of polypharmacy and drug-drug interactions: population database analysis 1995-2010. - PubMed - NCBI

f:id:noir-van13:20170307004930p:plain

Proportion of patients in Scotland receiving more than one drug, 1995 and 2010.

Figure:本文より引用

 

ポリファーマシーの増加は、高齢化とフレイル人口の増加によって益々推進されており、その多くは複数の長期的状態を有している。加えて、脳卒中や急性心筋梗塞などの重大なイベントリスクを軽減するために、複雑な予防レジメンが処方されている。

「ポリファーマシーは必要悪、つまり必要不可欠である」と Martin Duerdenは言った。彼は一般開業医であり、かつ King's Fundレポート「Polypharmacy and Medicines Optimisation: Making It Safe and Sound」の共著者でもある。彼は「これ、つまりポリファーマシーにはいつも悩まされていましたが、今ではポリファーマシーが現代医学の一部でなければならないと承知しています。しかし我々は多剤併用療法を実施する上で、最も効果的かつ害の少ない薬剤使用を確実にするための努力が必要です」と述べている。

 

King's Fund レポートによると個々の患者におけるポリファーマシーとは、複数の薬剤を同時に使用することと定義しており、それは適切にも問題(不適切)にもなり得る。

最良のエビデンスに従って処方され、最適化された薬剤が使用された時、それは適切なポリファーマシーであり、平均余命を延ばすだけでなく患者の QOLをも向上できる。
しかし不適切なポリファーマシーは、患者のコンプライアンスQOLに影響を及ぼすだけでなく、相互作用や有害な薬物反応リスクを増加させる可能性がある。King's Fund レポートには、医師、看護師、薬剤師のための多併存疾患とポリファーマシーの管理に関するより良い訓練が求められている。一般的な訓練コンサルタントは、複数の条件を有す患者が薬物治療をレビューするために充分な時間を割けるよう長くすべきであると述べている。個々の薬剤が他の薬剤との関連において、それぞれの薬剤が適切にまたは不適切に処方されているかどうかを考慮する必要がある。


Need for formal consideration 正式検討の必要性
10年前に 4つあるいはそれ以上の薬剤使用を閾値とし、この状態は高頻度に検討されてきたが
、現在この状態は一般的である。しかし処方薬剤の数が増えるにつれて、処方ミス、高リスク処方、薬物有害事象の危険性が増しているという明確なエビデンスが今や明らかとなっている。
一般的な訓練(診療により不適切なポリファーマシー是正)としては、10種類以上の薬剤を定期的に服用している患者と、4種以上の薬剤を服用している患者に対し薬物相互作用の可能性など、別のリスク要因がある患者の処方を見直すことを、実用的なより良いアプローチとしてあげている。慢性疾患の有病率は増加しており、多くの患者はいくつかの症状を自覚している。

 

各々の患者が各国のガイドラインに従って治療される場合、複雑な薬剤カクテルを処方されることになる。 Keele 大学にて一般診療と疫学の上級講師を務める Umesh Kadamは次のようにコメントしている。「ポリファーマシーは、高齢者だけでなく慢性疾患患者にとっても問題である。慢性疾患ガイドラインは複数の薬物を推奨しているため、患者はかなりの薬物を処方されるが、これと同時に患者はとても混乱させられる可能性がある」。

「現在のケアモデルにおいて、我々は複数の薬剤処方に体系的なアプローチをとっていません。したがって多併存疾患を有す患者において、ポリファーマシーは益々重要な問題となっています。」と彼は付け加えている。また、King's Fund レポートでは多併存疾患とポリファーマシー(問題)を有している患者が参加する臨床試験のさらなる実施を要求している。

 

Martin DuerdenBMJに次のように語っている。「多併存疾患は 65歳を超える患者にとっては一般的なことです。しかし我々の研究(臨床試験)のほとんどは単一の疾患に基づいており、複雑な病的状態の患者を排除する傾向があります。我々のエビデンスは非常に珍しい患者に基づいています。」

他の推奨事項としては、糖尿病、冠動脈性心疾患、心不全および慢性閉塞性肺疾患のような、一般的に共存する長期的なコンディションを考慮したエビデンスに基づくガイドラインの開発である。さらに、一般開業医 general practitioners(GPs)の成績目標を定めた品質と成果の枠組みは、単一疾病の治療改善ではなく、いくつかの長期的な(疾病)状態を有す患者のニーズに重点を置くよう見直されるべきである。


リバプールエイントリーにある大学病院の Ageing and Chronic disease 研究所の
John Wilding教授は BMJに次のように語っている。「ポリファーマシーは(疾患)全てに対する(治療)目標と、全て(の疾患)に対するガイドラインの意図しない結果です。例えば、患者が 15種類の薬剤を使用していることをあなたが知る前に、すでに彼らは糖尿病登録簿、冠動脈性心臓病登録簿、そして慢性閉塞性肺疾患登録簿に登録されている可能性があります。」

Minimising patient burden 患者の負担を最小限に抑える
King's Fund レポートは、増分処方または "処方カスケード" に対して警告している。これは臨床医が処方した 1つの薬剤によって症状が引き起こされたことを認識せず、この有害作用を解消する為に別の薬剤を処方することを指す。
John Wilding教授は次のように述べています。「もし患者が血糖値を適切に管理していなければ、実際にはあまりにも多くの薬剤が処方され、適切に服用していないために別の薬剤が投与されることがあります。薬剤を服用することで、どのくらいの負担を有しているのか患者から引き出すことが重要です」


King's Fund レポートによると、医薬品使用において多くの人々が最適なベネフィットを超えた、つまり過剰な医療を受けていた。治療を開始する時期について多くのアドバイスがあるが、治療を中止する決定を支援するための情報やエビデンスについては、はるかに少ないと指摘している。

長期的にのみ利益をもたらすであろう処方薬を一部の患者が依然として服用している場合がある(漫然投与)、これは人生の終わりに向かう上で特に懸念事項である。

 

Martin DuerdenBMJに次のように語っています。「一般的に、医師が薬剤処方を止めることはあまりありません。代わりに薬剤を加える傾向があります。特に高齢のフレイル患者の場合、薬剤が真に有益であるかどうかを評価することが重要です。例えば、身体機能の低い老人ホームの患者は、数年以上生活することはないでしょう(つまり寿命は短いでしょう)が、スタチンを服用し続けても恩恵を受けることは恐らく無いでしょう。」

彼は「患者とその家族との間で全ての薬剤について服用(継続)あるいは使用中止について議論することが重要だ」と付け加えた。

 

King's Fund レポートは患者の全体的ニーズを誰も考慮していない可能性があるため、医師の専門性向上に対処する必要があると報告している。つまり多併存疾患を有す患者は包括ケアをコーディネートできる一般臨床医にアクセスする必要があると説いている。また患者は疾患特有のクリニックを受診するのではなく、自身のケアコーディネーターである臨床チームによって、1度の診察で全ての長期的コンディションを見直されるのが理想である。

 

King's Fund レポートは、患者の治療について情報に基づいた選択をすることができるように患者を関与させることが重要であると指摘している。多くの患者が不愉快な雑事として多数の薬剤を服用していることが分かり、これは QOLを損なう可能性がある。

いずれにしても患者は、処方医が意図する薬を服用しない場合が多く、処方薬剤の多くは未使用または無駄になる。投薬レジメンは可能な限りシンプルにするべきであり、1日1回または 2回投与するのが理想的である。

 

Martin Duerdenは "たとえこれが妥協を伴っても処方計画をどのように簡略化できるかを医師が見なければならない" と述べた。例えば、スタチンは就寝前に摂取するのが最善ですが、患者は他の薬剤とともに日中にスタチンを服用することが望ましいかもしれない。
King's Fund レポート医薬品管理に関する実務的留意点を提供している。例えば医師は、患者が何を摂取しているか知っていると決めつけてはいけない。ハーブ製品OTC薬を含む全ての持参薬について患者に訪ねるよう助言している。


Wildingは BMJに次のように語っています。「機会が生じる度に薬剤の数を合理化しようと試みることは、すべての医師における責任です。特定の薬剤処方理由は、患者によっては長く忘れられることがあり、場合によっては(処方)元の臨床医にも忘れられていることがあります。」

 

 

⌘ 感想

ポリファーマシーや処方カスケード、臨床試験結果の限界、ガイドラインの問題点、コンコーダンス等について考察されていた。処方薬剤の適正化は正に Evidence-based medicine(EBM)であると感じた。

 

本論文では医師と患者を中心に話が展開されていたが、薬剤師を含むコメディカルの協調は不可欠であり、これが医師の負担軽減、患者の不定愁訴発見等に繋がるのではないかと個人的には考えている。診断に基づき処方箋を発行する医師に、負担や責任が多くのしかかっている状況にあると感じているが実際はどうなのだろうか。患者に薬を直接渡している我々、薬剤師に責任が無い訳が無い。

 

現在ガイドラインは、推奨ではなく絶対的な治療方針のように扱われているが、ガイドラインに記載の無い困難な状況を打破するためには、論文情報が役立つことは言うまでもない。なぜならばガイドラインは一つ一つの臨床研究を総合的に評価、つまり論文化された多くの情報を基に構成されており、エキスパートコンセンサスを経て発行されているからだ。情報がまとまっている反面、世に出るまでに時間がかかり、情報が古くなっている可能性は大いにあり得る。

 

話は変わるが厚生労働省はファーマシー・テクニシャン導入を検討しており、そうすることで薬剤師をより専門的な業務に従事させようと考えているようです(右に倣えな気もしますが)。患者のための薬局ビジョンでも明文化されていましたが、薬剤師が求められていることは対人業務であって対物業務ではない。もしも対物業務に従事することに対して違和感を感じているのであれば、EBMを実践してみるのも一つの手です。

 

私は殊更に、あるいは積極的に "EBMを実践しましょう" とは言いません。しかし現状、薬剤師の武器の一つとして論文情報の活用、EBM実践を完全否定するのは難しいと感じています。EBMの 4つの輪や 5つのステップを意識することは、個別化医療の実現、PDCA サイクルを回すことであり、そこには予め用意された正解はありません。

 

情報は日々アップデートされています。昨日まで信じて行ってきた行為が、実は古いものであり、最悪の場合誤っていることもあります。論文を読み、これまで培ってきた知識や経験と合わせ、現在行える最適な医療とは何か、と今一度自身に問いかけてみてはどうでしょうか。

 

 

⌘ 追加情報

King's Fund:イングランドにある健康とケア改善を目的とする非営利団体。King's Fund Report を刊行している。

手の洗い方にもガイドラインがありますか? (WHO 2009)

⌘ 私的背景

インフルエンザや急性上気道炎の患者も減ってきて、ひとまず薬局内が落ち着きかけた時、ふと気になったことがある。診断や薬物治療にガイドラインがあるように "手洗い" にもガイドラインがあるのだろうか?

 

厚生労働省はインフルエンザの予防啓発に以下のようなポスターを使用(2016年11月発行)

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/dl/poster28.pdf

マメな手荒いと、飛沫感染予防の為にマスク等で咳をまき散らかさないことである(ちなみに『うがい』は数年前に効果が薄いという研究結果を基にポスターから削除された)。

 

⌘ World Health Organization (WHO) が 2009年に手指衛生ガイドラインを発表

http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/70126/1/WHO_IER_PSP_2009.07_eng.pdf

原文

http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/70126/12/WHO_IER_PSP_2009.07_jpn.pdf

日本語訳(発行元:新潟県立六日町病院)

 

→ 日本語での要約があるのは非常にありがたい。

以下、一部引用:

f:id:noir-van13:20170306011736p:plain

→ 手ぴかジ◯ルとか息子とやんわり使用していたけど、ビタビタに掌いっぱいにした方が効果が高いみたい。意外。

 

f:id:noir-van13:20170306011738p:plain

 

→ アルコール製剤の時も思ったけど、めちゃくちゃ時間かかる。

 

⌘ 個人的には "その手は安全です" というキーワードがツボ

これだけ丁寧に洗えば、確かに手の汚れは落ちるかもしれない。

ガイドライン使用あるいは短時間の手洗いと、長時間の手洗い(例えば 30秒以上とか)とを比較した研究あったら良いのにな。Open-label になるだろうから、バイアス排除とエンドポイントの設定に気をつけないとトンデモ研究になりそうだ。あと Setting も multicenter で、、、などなど費用対効果が悪そうなことを考えている。

 

もう少しでインフルエンザや急性上気道炎の患者も、グッと減るだろう。その前に輪番が残っていますが、、、しかも耳鼻科。

EBM 実践における4つの輪(Evidence based practice における患者と医師の選択 BMJ 2002:Free)

www.ncbi.nlm.nih.gov

Physicians' and patients' choices in evidence based practice.
Haynes RB, et al. BMJ. 2002.

PMID:12052789

f:id:noir-van13:20170214010737p:plain

"Evidence does not make decisions, people do"

Figure.1 本文より引用

 

⌘ 結論

"エビデンスは意思決定をしない、(意思決定は)人々が行うのだ" というコトバと Figure.1 が全てである。Figure.1 より、エビデンスは 4 つの輪の内の一つであり意思決定には関わるが大部分を占めているわけではないことが分かる。

 

 

⌘ 以下、本文

Evidence based medicine (EBM) に向けられた批判、それは臨床家の手(自由)を拘束し、患者による最適ケア決定に至るための選択肢を奪う点にある。

 

実際に保険・衛生研究を実施するには多くの障壁がある。しかし概念的には臨床家の手を縛り、患者の選択(権)を奪うことは無い。むしろ患者の嗜好は、EBM の初期モデルに組み込まれており、その重要性は 2000 年頃に改訂された Figure. 1 で強調されている。

 

この図における臨床的判断では;

第 1 に、何が間違っていて、どのような治療オプションが利用可能であるかを確立するために、患者の臨床的および身体的状況を考慮(把握)する必要がある。

第 2 に、治療オプションは選択肢の有効性、実効性、効率性に関する臨床エビエンスによって調整される必要がある。

第 3 に、臨床医は各オプションに関連するであろう患者の嗜好性および可能性のある行動(彼あるいは彼女がどのような介入を受け入れる準備ができているかという点で)を考慮しなければならない。

最後に、これらの考察をまとめ、患者が受け入れやすい治療法を勧めるには臨床的専門知識が必要である。

 

いずれの状況においても、患者の臨床状態および状況が優先される可能性がある。例えば、僻地滞在間に胸の痛みを覚える人は、アセチルサリチル酸が唯一の有効な治療薬であれば、これを飲まざるを得ないかもしれないが、より大きなコミュニティ(都会?)では、より多くの治療法がある(一硝酸イソソルビドやニトログリセリン舌下、テープ剤等)。その他の例としては、過去に命にかかわる出血を経験した人のうち、輸血に対し批判的な宗教的信念を持っている人は、代替手段(医療)しか受け入れない可能性が高い。

 

対照的に、エビデンスのみでは意思決定を行えない。したがって、心房細動患者の抗凝固療法におけるエビデンスに基づく決定は、(過去の臨床試験によって)実証された抗凝固効果とその潜在的有害作用によって決定されるだけでなく、個々の臨床状況(例えば、患者の年齢や出血歴)および患者の好みが含まれる。例えば最近の研究では、脳卒中リスク低下の代償として許容され得る出血リスクが、患者毎で大きく異なることが示唆されている。さらに同研究において、ワーファリンまたはアスピリンによる(脳卒中予防に伴う)有害事象の出血に対して、一般的に患者は医療者よりも嫌悪感を示さないことが報告されている。


状況によって、患者によって(意思)決定は異なる可能性があるという概念は、ますます注目されている。
しかし意思決定に影響を及ぼすファクターについて、正しいバランスを取ることは必ずしも容易では無い。実際、患者にエビデンスを提供することで、患者が情報選択することは挑戦的であり、多くの場合、医師-患者間のコミュニケーションにおける現状認識を超えている。最大の課題は新たなエビデンス生成を待つことである。


EBM という用語は、臨床家と患者が意思決定を下す際に現在の最善のエビデンスにとどまることなく、敬意を払うことへの奨励のために開発された。代替用語としては、(より魅力的なものがあるかもしれないが)臨床研究で
強化したヘルスケアです。どちらの用語が適用されても、特に患者の希望が考慮されている場合は、臨床での実践においてエビデンスのより良い利用に自信を持つことができる。

 

⌘ 感想

個々の医療従事者が認識している、あるいは耳にしたことのある臨床試験の結果は極々一部であり、また目の前の患者に完全に当てはまる背景となると皆無に近い。

個々の医療従事者が論文を読むことに加え、患者の嗜好を考慮し、患者の置かれた環境、過去の臨床試験を用い総合的に判断することで、現状もっとも良いであろうと考えられる治療内容の提案、実施が可能ではなかろうか。そこには患者の理解度も重要であり、患者個々に合わせた平易な言葉が求められる。もちろんコンコーダンスという概念に従うのも良いと思う。

新薬ありきではない医療、コストベネフィットやコストパフォーマンスが日本でも注目され、昨年には HTA も導入されました。ここを好機と捉え行動するか現状維持のまま行くのかは個々の判断によります。ただ少なくとも、巷に出回ってるガイドラインの中には不適切なものもあることを知って欲しいし、妄信するのではなく『あくまで推奨』であると捉えて欲しい。

情報は日々アップデートされ、今読んでいる本、ガイドライン、論文は、すでに過去のものであるという研究結果もあるので、こちらについてもブログにアップしていきたいと思います。

私としては、エビデンスは心の拠り所であるとする考えが今のところ一番しっくりくる。

Evidence-based medicine (EBM) の必要性(Therapie 1996:Abstract only):Dear Dr. Sackett ①

www.ncbi.nlm.nih.gov

PMID:8881108

EBM の父、Sackett 先生の文献を読んでいこうと思い立ったので、気になった文献を読んでみたシリーズ①。

 

医師は常に最良のエビデンスに基づいて(診断や治療方針の)決定を下そうとする。このエビデンスは患者由来のデータに基づいて確立された事実ではなく、しばしば病態生理学的原理および論理の外挿を表す。無作為化比較試験の出現および増殖は、臨床歴および診察、診断、予後、治療、そして他の重要な医療問題に関する臨床的に有効なエビデンスの量および質の急速な増加をもたらした。その結果、臨床専門家の暗黙の非言語的推論の多くを明示することが可能になり、臨床的推論をより理解しやすくなっただけでなく、研修者が(情報に)アクセスしやすくなる。

エビデンスを追跡し、批判的に評価し、臨床実践に組み込む能力は「Evidence-based medicine」と名付けられている。有効なエビデンスの量が増えるにつれて、我々一人ひとりがそのエビデンスを同化し、評価し、そのエビデンスを最大限に活用するために必要なスキルを開発する必要性が生じる。しばしば我々は、臨床的に重要な知識に対する日々のニーズを特定したり解決したりせず、(結果として)臨床能力の漸進的な低下を招くことがある。私たちが知識を求めるとき、学術誌や教科書などの伝統的な情報源は、しばしば混乱(誤っている、まとまりがない)しているか、(情報が)古いものであるため、我々はしばしば同僚に頼っている。

臨床的に重要な知識を維持し、拡大する必要性は、医学教育を継続することのニーズが高まっている昨今において、部分的に対処されているが、どのようにして成し遂げるのがベストだろうか?

近年の評価により、3つの EBM 戦略がこれらの目標を達成するのに役立つことが示唆されている。具体的には ① EBM の習得、② 他者が作成した EBM 要約の検索と適用、そして ③ 他者が開発した EBM の受け入れ、などが含まれます。

 

 

→ あら?今、継続しようとしていることと大差ないかも。医療従事者一人ひとりが EBM を実践しようと医学論文に触れ、各々の考察を加えまとめていき、情報を共有、実際に活用することで EBM という非日常が日常に近づいていくのかもしれない。より良い医療の実現するその日まで。

 

プラズマ乳酸菌(JCM5805株)は風邪やインフルエンザを予防できますか?

www.ncbi.nlm.nih.gov

PMID:26234407

UMIN 試験 ID:  UMIN000017274

 

⌘ 背景

Lactococcus lactis ssp.※ lactis JCM5805 は、マウスとヒト、両方の種において形質細胞様樹状細胞(plasmacytoid dendritic cellspDC)を活性化するレアな乳酸菌である。pDC の活性化は NK 細胞や B 細胞、キラー T 細胞、インターフェロン(IFN)を活性化し、ウイルス感染予防に繋がるのではないかと期待されている。本研究では、冬季のインフルエンザ様病態への影響を評価するために、無作為化プラセボ対照二重盲検試験を実施した。

 

⌘ PICOT

P:健康な日本人 214 例(30-59 歳の男女・地域:東京、神奈川、千葉、埼玉)

 組入基準:試験開始前の血液検査(WBCRBC、Hb、Ht、MCV、MCH、MCHC、PLT、T-cho、TG、LDL-cho、HDL-cho、BUN、UN、Cre、UA、AST=GOT、ALT=GPT、γ-GT、γ-GTP、LD、LDH、CPK、CK、GLU)およびアンケート結果を基に 297 人から 214 例を選択

 除外基準:免疫疾患患者、肝障害、腎障害、心臓病、貧血、不眠症、ミルクアレルギー、重度の花粉症、18 ヶ月以内にインフルエンザワクチン接種を受けている、日常的に乳酸菌あるいはヨーグルトを摂取している、妊娠中あるいは授乳中の女性、アルコール依存症その他医師が不適であると判断した場合

I :JCM5805株のみを用いた乳酸菌飲料 100 mL/day、10 週間連続摂取

C:乳酸菌を含まないプラセボ飲料 100 mL/day、10 週間連続摂取

O:Primary → 風邪・インフルエンザ様症状の発症記録

    Secondary → 摂取前(0週)、摂取後(10週)における血液免疫学的検査

T:ランダム化比較試験、予防効果、2013年1月〜3月のうち 10 週間

 

⌘ ランダム化されているか?

ランダム化されている

→ 年齢と性別を基にコンピューターにてランダム化

 

⌘ ランダム割付が隠蔽化されているか?(selection bias は無いか?)

中央割り付けであると判断した

 

⌘ マスキングされているか?(ブラインドか否か?)

されている double-blind

 

⌘ プライマリーアウトカムは真か?

予防という観点では真であると判断した

 

⌘ 交絡因子は網羅的に検討されているか?

(可能な範囲で)されていると判断した

 

⌘ Baseline は同等か?

同等(Table 1 より)

 

⌘ ITT 解析されているか?

本文から推測するに Full Analysis Set(FAS)であると考えられる

 

⌘ 追跡率(脱落)はどのくらいか?結果を覆す程か?

問題無し

 ◯プラセボ群:107/107 = 100.0%

 ◯介入群:106/107 = 99.1%

→ 被験者はクリニックを3回(試験組入時、ヨーグルト摂取開始前、摂取終了後)訪問する予定であったが、介入群のうち 1 名は訪問しなかった。

 

⌘ サンプルサイズは充分か?

試験結果から充分であると判断した(一応計算してるのかな)

→ 本文に「38 人の健常者で行ったパイロット試験の結果から、統計学的有意差 5% を得る為に必要なサンプルサイズを 80 と推計」しており、本試験では 100 例を設定している。

 

⌘ Setting

芝パレスクリニック(東京都)にて実施。1 つの施設のみ

→ インフルエンザの流行状況(東京都)の 2013年のデータから、流行ピーク期間をカバーできてはいるが、いかんせん 1 施設のみというのが気になるところ。

 

⌘ 結果は?

 ◯Primary outcome

  風邪・インフルエンザ様症状の発症数:

  プラセボ群 14 人 vs. 介入群 7 人(P = 0.127, χ2 test)

  各症状:

f:id:noir-van13:20170122005303p:plain

(本文 Table 3 より引用)

  → 咳および発熱については有意差あり。特に介入群において Mild〜Severe の発生数は少ない。喉の痛みおよび頭痛については有意差無し。喉の痛みについては介入群において Severe は少ない傾向にあるが、頭痛の Severe は多い傾向であった。

 

 ◯Secondary outcome

  血液免疫学的検査:

  → pDC の活性化マーカーである CD86 は、介入群で増加していたが、プラセボ群では変化が認められなかった。

  → インフルエンザ罹患後に増加するとされる IFN-α および IFN-stimulated gene(ISG)15 は、両群ともに増加していた。

 

 ◯副作用

  →両群ともに副作用は報告されなかった(→ですよね〜)

 

⌘ 考察

今回用いられた(小岩井乳業株式会社製の)JCM5805 株の乳酸菌飲料 100 mL 中には、コロニー形成単位 1000 億個が含まれる。これは市販飲料に含まれる菌数と同じであった(気になる方は共同販売しているキリンさんの商品を検索してみて下さい)。

プラセボ飲料 100 mL は、JCM5805 株の乳酸菌飲料と同じ栄養構成(67 kcal、タンパク質 3.2 g、脂質 0.7 g、炭水化物 12 g)とのこと。

 

もう少し primary outcome について解析すると、

 ◯相対リスク RR:{7 / (106)} / {14 / (107)} = 0.066 / 0.131 = 0.504  50.4%

 ◯相対リスク減少率 RRR:1-RR = 0.496  49.6%

 ◯絶対リスク減少率 ARR:0.131 - 0.066 = 0.065  6.5%

 ◯治療必要数 NNT:1 / ARR = 1 / 0.065 = 15.38  16

であった。

 

乳酸菌飲料を摂取するだけで風邪やインフルエンザ(A 型 H1N1 のみ検討)の罹患や、一部症状の重症化を抑えられるのは良いかもしれない。しかも今回は 10 日間の摂取のみ。期間が延びれば効果差はさらに大きくなったかもしれない(変わらないかもしれない)。

アウトカム減少に至った詳細なメカニズムは依然として不明であり、本結果のみで JCM5805 株の乳酸菌飲料pDC の活性化を引き起こし、(いわゆる)免疫力を高めるとは言えない。また一部の地域のみで認められた結果であり、アウトカム発生数も少なく絶対差は臨床的に意義があるのかと問われれば不明。

整腸作用もあわせて期待するなら摂取していても良いのでは?と思う。500 mL 入りペットボトルなら 100〜130 円くらい。実際、風邪ひいた時の咳と熱ツライもんね。

 

最後に気になったのが、謝辞の項に "Authors have no financial support or funding to report" との記載。しかし author にはキリン株式会社の社員が含まれているので、当然資金提供はキリン株式会社。このような記載方法は正しいのだろうか?汗

 

色々と書きましたが、私は毎日ヨーグルトを食べています。

 

 

⌘ 追加情報※

  ssp. → subspecies 亜種のこと。subsp. とも標記される。

  sp. → species 種小名のこと。

  spp. → sp. の複数形。

非小細胞肺がんに対するニボルマブとドセタキセルの効果はどのくらい違いますか?(CheckMate 057)

www.ncbi.nlm.nih.gov

PMID: 26412456

 

Funding: Bristol-Myers Squibb

ClinicalTrials.gov number: NCT01673867(プロトコールの途中変更あり→  Appendix のプロトコールに記載あり計 3 回、優越性が認められたため早期中止)

 

 

⌘ 背景

非扁平上皮性の非小細胞肺癌(NSCLC)患者における効果的な選択肢は、初回化学療法後に病態が進行する患者に限定されている。

(参照→ EBMの手法による肺癌診療ガイドライン2015年版ガイドライン上の一次治療はプラチナ製剤やチロシンキナーゼ阻害薬が推奨されている。個々のエビデンスの吟味はできていない、というか時間かかりそうなので今回は勘弁)

 (セカンドラインにおける)ドセタキセル推奨は、最善のサポートケアではなく生存期間の延長に基づいて進行性 NSCLC の治療の第 2 選択として承認された。

 ドセタキセル(商品名:タキソール→微小管重合阻害薬)よりも良好な副作用プロファイルを有するペメトレキセド(商品名:アリムタ→ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害薬)およびエルロチニブ(商品名:タルセバ→上皮成長因子受容体 EGFR 阻害薬)のような比較的新しい薬剤はドセタキセルよりも劣っている、あるいはセカンドラインとして使用された場合に全生存期間においてドセタキセルに対し優位性を示せなかった(非劣性)。

 活性化T細胞上に発現する Programmed Death 1(PD-1)受容体は、腫瘍に発現したリガンド PD-L1 および PD-L2 が結合することにより、T細胞活性化がダウンレギュレーションされ、腫瘍は免疫逃避immune escape を促進する(つまり腫瘍細胞は免疫系による認識および排除を免れる)。
 完全ヒト IgG4 PD-1 免疫チェックポイント阻害抗体であるニボルマブ(商品名:オプジーボ)は、PD-1 媒介シグナル伝達を破壊し、T 細胞の抗腫瘍免疫を回復させる可能性がある(低下した抗腫瘍作用を回復させる)。
 第1相試験では、ニボルマブ単剤療法は耐久性のある抗腫瘍活性を示し、NSCLC サブタイプ全てにおいて生存率を向上させた(①Phase I study of single-agent anti-programmed death-1 (MDX-1106) in refractory solid tumors: safety, clinical activity, pharmacodynamics, and immun... - PubMed - NCBI、②Safety, activity, and immune correlates of anti-PD-1 antibody in cancer. - PubMed - NCBI、③Overall Survival and Long-Term Safety of Nivolumab (Anti-Programmed Death 1 Antibody, BMS-936558, ONO-4538) in Patients With Previously Treated Adv... - PubMed - NCBI)。

 重度前治療を受けている進行性非扁平上皮性 NSCLC 患者のうち、nivolumabは17.6% の反応率と関連しており、(投与後)1年で 42%、2年で 23%、3年で 16% の全生存率、および(投与後)1年で無増悪生存率 18%を示した(上記 ③ 文献結果)。
今回、進行性非扁平上皮性 NSCLC 患者において、ニボルマブドセタキセルを比較した無作為化オープンラベル国際共同第 Ⅲ 相試験の結果を報告する。

 

⌘ PECOT

P:非扁平上皮性 NSCLC で平均 62 歳(range: 21-85)の男女 582 人

(組み入れ基準→ECOG が 0 あるいは 1 の患者。十分な血液学的、肝臓および腎機能を有する;中枢神経系への転移を有する患者は、転移が治療され安定していれば組み入れた。治療開始前に得られた腫瘍組織は、バイオマーカー分析に使用するのみで患者の選択には使用されなかった。NSCLC の IIIB期または IV期放射線照射後の再発性非扁平上皮癌治療、外科的切除後の再発、進行期間中、以前にプラチナベースの 2 剤併用化学療法レジメンを 1 度だけ受けた患者。EGFR 変異または ALK 転座が既知の患者は、チロシンキナーゼ阻害剤療法の追加あるいは追加治療の選択、およびペメトレキセド、ベバシズマブ、またはエルロチニブへの治療切り替えは全ての患者に認められた

(除外基準→自己免疫疾患、症候性間質性肺疾患、全身性免疫抑制、チェックポイント標的薬剤を含む免疫刺激性抗腫瘍剤による前治療、およびドセタキセルの事前使用)

I :ニボルマブ 3 mg/kg、2 週間毎に投与(最大投与可能回数:約 26 回/年), i.v.

C:ドセタキセル 75 mg/m2、3 週間毎に投与(最大投与可能回数:約 17 回/年), i.v.

O:primary - 全生存期間

  secondary - 治験担当者が評価した奏効率、無増悪生存率、腫瘍 PD-L1 発現レベルによる有効性、および患者が報告したアウトカム

T:ランダム化比較試験(オープンラベル)

 

⌘ ランダム割付が隠蔽化されているか?(selection bias は無いか?)

以前に受けていた治療の影響が本試験結果に反映される可能性が高いため、以下 2 因子についての層別化を実施(この2因子については両群で同条件になるよう努めている)。Concealment については IVRS※ を採用しているため中央割付の可能性が高い。

→①以前の維持療法(Yes vs. No)および ②治療ライン(2ndライン vs. 3rdライン)

Randomization was stratified according to prior maintenance treatment (yes vs. no) and line of therapy (second line vs. third line).

 

⌘ マスキングされているか?(ブラインドか否か?)

オープンラベル open-label

→疾患からブラインドで行うことは困難であり、費用面からも不適と考えられる。また薬剤によって投与期間が異なる。リアルワールドで肺がん患者がどんな治療を受けるか知らないことはほぼ無いだろう。

→治療薬による副作用の早期発見および早期治療、個々の薬剤毎に副作用が異なるためにオープンで実施したとの記載あり。

 

⌘ プライマリーアウトカムは真か?

真(全生存期間)

 

⌘ Baseline は同等か?

同等(インバランスについても記載有り)

→The baseline characteristics were balanced between the treatment groups, with slight between-group imbalances in the percentages of male patients (二ボルマブ 52% vs. ドセタキセル 58%) and patients younger than 65 years of age. (←ここは 75歳未満の間違いかな?と思いましたが、 appendix に 65歳未満の組み入れ数の記載もありました。二ボルマブ:37-84歳、65歳以上-75歳未満 88人、65歳未満 184人 vs. ドセタキセル:21-85歳、同 112人、同 155人)

 

 ⌘ 交絡因子は網羅的に記載されているか?

記載されている(他にもあるかも

→大項目で 14 因子:年齢(中央値・範囲)、75歳以上の割合、性別(男性の割合)、人種(白人、アジア人、黒人、その他)、ECOG performance‑status score、肺がんステージ(ⅢB、Ⅳ)、喫煙歴(Current or former smoker、Never smoked、Unknown)、EGFR 変異有り、ALK 変異有り、KRAS 変異有り、以前の維持療法、治療ライン、前治療レジメン(白金ベース、ALK 阻害薬、EGFR チロシンキナーゼ阻害薬)、最良効果判定(完全あるいは部分奏効、安定、進行、不明あるいは報告無し)

 

⌘ ITT 解析されているか?

されている。本文に記載有り。part of intention-to-treat

 

⌘ 追跡率(脱落)はどのくらいか?脱落率は結果を覆す程か?

Table 3 以外はニボルマブ 292 例 vs. ドセタキセル 290 例で解析。なので Figure 1 の結果については、脱落無しの追跡率100% で問題ないと考えられます。

また以下の項目も追記いたします。

 

追跡率は両群ともに 90% を超えているため問題ないと判断した。 

  ◯ 二ボルマブ:追跡率 287/292 = 98.29%(脱落 5 例、1.71%)

  (脱落の内訳:試験薬とは無関係な有害事象 1 例、組入基準から逸脱 4 例)

  ◯ ドセタキセル:追跡率 268/290 =  92.41%(脱落 22 例、7.59%)

  (脱落の内訳:患者希望により治療中止 4 例、同意撤回 12 例、追跡不能 1 例、組入基準から逸脱 5 例)

 

⌘ サンプルサイズは充分か?

403 例の死亡時点で解析し優越性があれば中止。抗がん剤の場合、途中解析・優越性示唆による早期中止を想定しているため、推定必要例数に到達した時点で統計解析する(解析回数も予め設定している)。近年では The O’Brien–Fleming alpha-spending function を用いることが多いようである。途中解析を実施し最終解析にて P= 0.0408 未満で優越性が示されている(403 例死亡後に P= 0.047 未満であれば優越性有り)。

ドセタキセルの過去の試験結果から、262 例の死亡時点における有意差は両側 5%、power= 90、ハザード比= 0.72 と推定している。また 403 例の死亡が認められるであろう推定必要期間は約 25 ヶ月とのこと。本試験では中央値 12.2 ヶ月 時点において設定死亡数に達したものと考えられる。two-sided  5%  significance  level  sequential  test  procedure  with  one interim  analysis  after  262  deaths  (65%  of  total  deaths)  will  have  90%  power  if the  median  OS  times  in docetaxel and BMS-936558 are 8 and 11.1 months (HR=0.72).

 

⌘ 結果は?

Primary outcome である薬剤投与 1 年後の全生存期間については統計学的有意差有り。

 ◯追跡期間中央値:

 12.2 ヶ月(95% confidence interval [CI] 9.7-15.0)

f:id:noir-van13:20170111005622p:plain

(論文中の Figure 1 A より引用:legend は本文を参照)

 

 ◯全生存率:

 二ボルマブ 51% (95% CI 45-56) vs. ドセタキセル 39% (同 33-45)

 

 ◯ハザード比(Hazard ratio, HR):

 0.73(95% CI 0.59-0.89; P = 0.002)←本文では 96% になってる。間違い?

 

Secandary outcome 

 ◯治験担当者が評価した奏効率

 二ボルマブ 19%(95% CI, 15-24)vs. ドセタキセル 12%(95% CI, 9-17) P = 0.02

 (完全奏効:ニボルマブ 4 人 vs. ドセタキセル 1 人)

 

 ◯無増悪生存率・期間(投与 1 年後):

 二ボルマブ 19%(95% CI, 14-23)vs. ドセタキセル 8%(95% CI, 5-12)P = 0.02

 二ボルマブ 2.3 months(95% CI, 2.2-3.3)vs. ドセタキセル 4.2(95% CI, 3.5-4.9)

 HR = 0.92(95% CI, 0.77-1.1; P= 0.39)

 

 ◯腫瘍 PD-L1 発現レベルによる有効性(582 例中 455 例、78% がデータ有り):

 PD-L1 の発現度合いにより治療効果が異なっている。サプリのデータだが、個人的には重要であると捉え掲載した。これを踏まえていれば CheckMate-026 の fail は無かったのではなかろうか。

f:id:noir-van13:20170115221428p:plain

(論文中の Figure S5 より引用:legend は本文を参照)

 DOR:duration of response

 mosmonths

 

 ◯患者が報告したアウトカム:

 現在進行中との記載有り。Safety  was  assessed  by  an  evaluation  of  the  incidence  of clinical adverse events and laboratory variables, which  were  graded  according  to  the  National Cancer  Institute  Common  Terminology  Criteria for  Adverse  Events,  version  4.0.  Select  adverse events (those with a potential immunologic cause) were grouped according to prespecified categories. Analyses  of  patient-reported  outcomes  are  ongoing.

 

⌘ 考察

Figure 1 の結果から、二ボルマブは投与開始 9 ヶ月後よりドセタキセルとの差が開き始めており、12 ヶ月後には有意な差を持って 27% 死亡リスクを低下させた。しかし、癌の進行割合においてはドセタキセルの方が少なかった。

Primary outcome についてもう少し詳しく見ていくと、

 ◯相対リスク RR:51/39 = 1.308(生存率なので 1 より大きい方が良い)

 ◯相対リスク減少率 RRR:(39-51)/39 = 0.308(30.8%)

 ◯絶対リスク減少率 ARR:51-39 = 12%

 ◯治療必要数 NNT:1/0.12 = 8.333 = 8 人 9 人(ここは切り上げでした。御指摘ありがとうございます)

 ◯治療期待オッズ(N 先生の受売り):1.27

という結果であった。Figure 1A の結果から、末期 NSCLC 患者へのニボルマブ投与により(ドセタキセル投与と比べ)2.8 ヶ月間寿命が延長する。ただし 24 ヶ月後にはニボルマブ投与群で 9 人、ドセタキセル投与群で 5 人の生存に留まった。ちなみに有害事象はドセタキセルに比べて二ボルマブの方が少なかった。

f:id:noir-van13:20170115224807p:plain

(論文中の Table 3 より引用:legend は本文を参照)

 

最後にコスト面(2017年 1月時点における薬価ベース:窓口での負担額では無い)についてだが、仮に身長 164 cm、体重 60 kg の成人に両薬剤を投与した場合、

 ◯ニボルマブ(商品名:オプジーボ)※

  20mg/2mL→ 150,200円(75,100円/mL)

  100mg/10mL→ 729,899円(72,989円/mL)

 → 約 3500万円/年(2017年 2月には、この値より半額)

 ◯ドセタキセル(商品名:タキソール)

  20mg/mL:19,660円(ジェネリック医薬品 20mg/2mL:12,552円)

  80mg/4mL:67,304円(ジェネリック医薬品 80mg/8mL:43,164円)

 →約 178万円/年(ジェネリック医薬品:約 113万円)DuBois 式を使用 1.651m2

 

⌘ 結論

末期 NSCLC 患者を対象としているため、個人的にはコストベネフィットは低く、やはりニボルマブは(半額になったとしても)高価であるなという印象(セカンドラインであることも留意)。ここは患者背景(家族や友人も含)により異なるため、ニボルマブ使用の是非を問いたいわけではありません。また抗がん剤治療は 2 剤以上の併用療法が多く、今後ニボルマブも併用療法に組み込まれる可能性は充分あると思っています。ただし、その場合、薬価をさらに下げなければ皆保険制度は崩壊しかねない(すでに崩壊しかけているかも?)。薬価下げすぎると安くて効果が高い薬剤が使われなくなる(メーカーが販売中止する)ので困る。報酬制度の見直しが迫られているのではなかろうか。それにしても抗がん剤はよく分からん。勉強を続けます。

 →2017.2.5 追記:EBM-Tokyo のワークショップに参加してきました。論文結果の解釈や仮想症例に対するディスカッション等、非常に有意義な時間を過ごせました。そして EBM 実践においては論文の批判的吟味はそこそこで、多くの論文に触れることが重要であると感じました。なので、当面の目標は『 3 分くらい』で論文を読むことにします。

 

⌘ 追加情報※

① Eastern Cooperative Oncology Group (ECOG) performance-status score

Score 定義
0 全く問題なく活動できる。
発病前と同じ日常生活が制限なく行える。
1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。
例:軽い家事、事務作業
2 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない。
日中の50%以上はベッド外で過ごす。
3 限られた自分の身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす。
4 全く動けない。
自分の身の回りのことは全くできない。
完全にベッドか椅子で過ごす。

日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG:Japan Clinical Oncology Group)より表を引用

原著:Common Toxicity Criteria, Version2.0 Publish Date April 30, 1999

https://ctep.cancer.gov/protocolDevelopment/electronic_applications/docs/ctcv20_4-30-992.pdf

 

② O' Brien-Fleming 法

抗がん剤のような、市場から効果と承認スピードを求められている薬剤の場合、最終評価項目の解析を研究終了前に行い、予想以上の効果が観測された場合には研究を早期終了し、承認申請手続きに移行することがある。

Pocock 法等、他の方法より解析総数に依存せず、推定最終解析時における有意水準が比較的 0.05 に近く設定される。これにより他の方法に比べ最終解析における有意差が出やすくなるという利点がある。しかし研究開始に近い時点の中間解析では(早期であれば早期であるほど)有意水準が厳しく設定されることになるため試験の早期終了は期待できない。これは試験早期の小規模なデータのみで新薬を有効とする妥当性を担保することは困難であることと、小規模データのみでは医師等、専門家からの試験結果に対する支持を得られにくい為である。

 

③ 喫煙歴

Current smoker:現在、毎日喫煙あるいは特定の頻度で数日は喫煙している

Former smoker:過去100本以上吸ったが、現在は吸っていない

Never smoked:現在吸っていない(過去吸った本数100本未満

 

④ 奏効率

腫瘍の直径が半分以下になる患者割合。RECIST では長径が 70% 以下と定義。
 
オプジーボの薬価について
2017 年 2 月より上記の半額となる予定。なぜか?これは保険適応疾患が急増したため、また海外に比べ高価であったことも一因としてあげられる。半額になっても、、、高い。
 
⑥ DuBois 式

A formula to estimate the approximate surface area if height and weight be known. 1916. - PubMed - NCBI

 

⑦ IVRS (Interactive Voice Response System)

中央コンピュータにて割付をコントロールし、組み入れ患者は電話にて治療薬等の指示を受ける。選択バイアスやブラインド保持等、様々な試験方法に用いられている。またコスト削減や、患者情報をリアルタイムに入手できる等のメリットもある。

→   似た方法に Interactive Web Response System (IWRS) があり、こちらは Web site で指示を受ける。