論文至上主義をゼロから考える〜その薬の効果はどのくらい?〜

猫好きの猫になりたい薬剤師です。どう医療に関わっていくか等々、薬剤師の一人である自身の感じたこと、考え方を投稿していきます。備忘録的な役割が大きいです。本ブログの記載内容については一切の責任を負えません。原著論文を参照して下さい。また情報の二次利用につきましては各々の責任でお願いいたします。記載内容に誤りがありましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

2型糖尿病治療における血圧や脂質、血糖コントロールはどのように行いますか?ほどほどでも何とかなりますか?(後向きコホート研究; PLoS One. 2014; Free)

All-Cause Mortality in Patients with Type 2 Diabetes in Association with Achieved Hemoglobin A1c, Systolic Blood Pressure, and Low-Density Lipoprotein Cholesterol Levels

PLoS One. 2014 Oct 27;9(10):e109501. doi: 10.1371/journal.pone.0109501. eCollection 2014.

Chiang HH et al.

www.ncbi.nlm.nih.govPMID: 25347712

 

【背景】

2型糖尿病患者におけるヘモグロビンA1cHbA1c)および収縮期血圧(SBP)、低比重リポタンパク質コレステロール(LDL-C)のコントロールについてはあまり明らかではない。本研究では、各々のコントロール幅と死亡率との関連性を明らかにする。

 

 

【結論】

 2型糖尿病患者の死亡率と、血圧や脂質、血糖コントロールとの間には J-curve現象が認められた。本研究は retrospective cohort studyであるため、未知の交絡因子を完全には調整・排除できてはいない。しかし個人的には、本研究結果から厳格な治療の益は少ないと感じた。

 

 

【PICOTS】

P: 18歳以上の 2型糖尿病患者 12,643名

組入れ基準→ コホートデータ内で、外来性糖尿病診断(ICD-9:250)および糖尿病の最初の外来患者来院 6ヶ月間に処方された経口血糖降下剤またはインスリンを含む薬剤処方を含むように同定。Index Date は糖尿病と診断された外来診察の初日から半年後の日付として定義された。最終的な糖尿病コホートは合計 17,837人の患者から成っていた。原因究明の全死亡が発生するまで、それぞれの Index Dateから追跡調査した。死亡が記録されていない場合、検閲の日付は研究の終了日(2010年12月31日)として定義された。研究プロトコルは、極東記念病院の研究倫理委員会によって承認され、インフォームドコンセントの必要性を放棄した。プロトコル番号:100073-F。

除外基準→ それぞれの Index Date後に少なくとも 12ヶ月の追跡調査を受けていない患者は、研究から除外された。ベースライン期間は、糖尿病の最初の外来診察から Index Dateまでの 6ヶ月として定義された。また Index Date 時に 18歳未満の患者あるいは 1型糖尿病患者を除外した。 1型真性糖尿病は、ICD-9:(250.x1または 250.x3)および致命的疾患登録カードによって同定された。

I  : 3因子(HbA1c、SBP、LDL-cholesterol)の層別化

C: (ー)

O: 全死亡

T: 後向きコホート研究retrospective cohort study、予測ルール

S: セッティングは 1ヵ所 --- 台湾の新台北市にある極東記念病院(2002年〜2010年に作成)

 

 

⌘ 追跡期間は?

平均追跡期間 =5.6±2.4年

糖尿病による "死亡" を観察するのに、まぁ妥当ではないでしょうか。

 

 

⌘ 結果に及ぼす程の脱落はあるか?

無し。全てのアウトカムに反映されている。

 

 

⌘ アウトカムの観察者はマスキングされているか?(危険因子は既知であったか)

されていない。ハードエンドポイントであるため、個人的にはマスキングの必要は無いと思います。

 

 

⌘ 交絡因子の調整は?

多変量解析(潜在的交絡因子の調整を実施)→Cox比例ハザードモデル

 

 

コホートの背景は?

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(Table 1:本文より引用)

 

 

⌘ 結果は?

Figure 2のインパクトが大きいので以下に引用します。観察期間中に死亡したのは 1,278人であり、これは全体 12,643人の 10.11%であった。本研究の 2型糖尿病コホートにおいて、HbA1c 7.0〜8.0%、SBP 130〜140 mmHg、または LDL-C 100〜130 mg/dLの患者の全死亡率が最も低い値を示した。 これらの関連性を確認し、詳細なメカニズムを追調査するためには、さらなる研究が必要である。

 

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(Figure 2:本文より引用)

 

 

⌘ 研究の限界

①ランダム化していないため、未知の交絡因子を内包している

②喫煙歴、BMI、併存疾患の家族歴を完全には把握できていない

③パラメータの欠損があり、なかでも LDL-コレステロールのデータ欠損は 27.8%

④Taiwan National Register of Deathsにおいて特定の死亡原因は、ICD-9(2002-2007)およびICD-10(2008-2009)のコードに分類され、30.8%の死亡が糖尿病(ICD-9:250、ICD-10:E10-E14)に分類された。したがって分類システムは、追調査を行う上での正確性は充分ではない。

 

 

⌘ コメント

興味深い研究。前向き研究はあるのでしょうか。前向き研究の結果と相関があれば、より強固なエビデンスとなりそう。あら、より強固にする必要はないか。とにかく真理らしいものに触れてみたい。結局は触れられないのだけど。

 

 個人的には、高齢者で「食べるものがない。血糖値上がるのが怖い。」と嘆いている HbA1c =6%代の患者さんに紹介したいデータです。