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論文至上主義をゼロから考える〜その薬の効果はどのくらい?〜

猫好きの猫になりたい薬剤師です。どう医療に関わっていくか等々、薬剤師の一人である自身の感じたこと、考え方を投稿していきます。備忘録的な役割が大きいです。本ブログの記載内容については一切の責任を負えません。原著論文を参照して下さい。また情報の二次利用につきましては各々の責任でお願いいたします。記載内容に誤りがありましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

ピロリ菌除菌後にすぐ検査すると偽陰性となるのはなぜですか?

背景:Helicobacter pylorH. pylori)感染の診断と治療のガイドラインに以下の記載がある。またネット上では偽陰性を生じる薬剤として下記の薬剤が掲載されていた。

 

H.pylori感染の診断と治療ガイドライン (2009) 

PPI や一部の防御因子増強薬等、H. pylori に対する静菌作用を有する薬剤が投与されている場合、除菌前後の感染診断の実施にあたっては、当該静菌作用を有する薬剤投与を少なくとも 2 週間は中止することが望ましい1-3

→迅速ウレアーゼ試験および尿素呼気検査が特に影響を受ける

 

偽陰性を生じる可能性のある薬剤
プロトンポンプ阻害剤 (PPI)
 ランソプラゾール、オメプラゾール
→他の PPI も影響する。これはウレアーゼ活性抑制作用に起因している。
 
抗生物質全般
→でしょうね。
 
③胃粘膜保護剤
 スクラルファート、エカベト
→知らなかった。そこで論文検索したら、エカベトレバミピド尿素呼気検査において低値を示す可能性があるが、有意ではないとのこと。つまりPPI ほど気にしなくて良いのでは?というのが個人的見解。ちなみにランソプラゾール(PPI)、ニザチジン(H2-RA)、エカベトナトリウム、レバミピド、テプレノン、塩酸セトラキサートおよびスクラルファート(防御因子増強薬)について検討されているが、有意に偽陰性を示したのはランソプラゾールのみ(PMID:14614600)。
 
ビスマス製剤
 次硝酸ビスマス
→2016 年、ピロリ菌除菌における 4 剤併用療法の論文が発表された。結果は後ほど。

 

目的:原著論文にあたることで「検査前後の薬剤投与中止 2 週間の根拠」を明らかにする

 

方法:Pubmed での論文検索

 

結果:

1) Chey WD. Proton pump inhibitors and the urea breath test: how long is long enough?

 Am J Gastroenterol 1997; 92: 720-721.(PMID: 9128344

→本文は読めなかった。Am J Gastroenterol 1996; 91: 2120-2124.(PMID: 8855733)に対するコメント文献。

→元論文:十二指腸潰瘍患者におけるオメプラゾールのピロリ菌移行について検討した文献。

 P:4 週間オメプラゾールを投与された十二指腸潰瘍患者

 I :投与後 4-6 週間後に肛門生検(Genta染色:鍍銀法)の培養および組織学的検査

 O:H.pylori の有無または生検当たりの H.pylori コロニー数

 

結果:尿素呼気検査で false-negative となる可能性と、オメプラゾールによってピロリ菌が幽門洞から胃底部に移動するという説を否定する結果であった。

結論: オメプラゾール(PPI)は静菌作用を有しており、休薬 0〜2 週間後の尿素呼気検査では休薬不十分であるとする根拠の一つを示した。

 

2) Laine L, Estrada R, Trujillo M, et al. Effect of proton-pump inhibitor therapy on diagnostic testing for Helicobacter pylori. Ann Intern Med 1998; 129: 547-550. (PMID: 9758575

→Abstract のみ読めた。

目的:PPI 投与患者の尿素呼気検査結果の陽性から陰性への変換の頻度および期間を決定するための試験


設定:2つの都市大学胃腸科クリニック
 P:尿素呼気検査で陽性結果を示したH.pyloriに感染した患者
 I :ランソプラゾール 30 mg /日、28 日間
 O:尿素呼気試験を 28 日間実施。結果が陰性であった場合、治療完了後、 3、7、14
および 28 日後に試験を繰り返し、結果が陽性に戻った。


結果:H. pyloriが根絶されなかった 93 人のうち 31 人(33%)で呼気検査結果が陰性で
あった。ランソプラゾール治療終了後の呼気検査結果が陽性であった患者の割合は、3日目で 91%(95%CI:83%〜96%)、7 日目で 97%(90%〜99%)、14 日目で 100%(96%〜100%)であった。

 

結論:H.pylori 感染者が尿素呼気検査を受ける前には PPI を 2 週間休薬する必要がある。

 

3) Graham DY, Opekun AR, Hammoud F, et al. Studies regarding the mechanism of false negative urea breath tests with proton pump inhibitors. Am J Gastroenterol 2003; 98:1005-1009.(PMID: 12809820

→全文フリーで読めた。

 

 P:30 人(男 53.3%;平均 42.5 歳  37–55)の H.pylori 感染のボランティア患者

 I :オメプラゾール 20 mg を 1 日 2 回、13.5 日間投与

 O:尿素呼気検査(クエン酸を含む)は、PPI 投与前 1、2、4、7 および 14日、投与後 6.5 日に行った。また培養および組織学実験については、5 ヶ月以上の wash-out 後、被験者のうち 9 人がオメプラゾールで 6.5 日間再検討された。

組織学および培養のための腹腔およびコーパス生検を、PPI 投与前および投与に実施した。

 

結果:6.5 日目の尿素呼気検査では有意に減少した(陰性を示した;P = 0.031)。

10人の被験者(全体の 33%)が尿素呼気検査において一過性の陰性を示した。

尿素呼気検査においてPPI 投与後、4 日目では 1 人を除くすべての被験者で、14 日目には全ての被験者で回復が認められた(陰性から陽性に転じた)。

培養および組織学実験では、PPI 再検討時に 9 人の被験者のうち 3 人(33%)が尿素呼気検査で陰性を有した。ピロリ菌の密度については 、幽門洞生検で 5 例、胃底部生権で 3 例 が PPI 療法で陰性となった。

 

結論:オメプラゾール服用後の尿素呼気検査は、最低でも 3 日休薬後、出来れば 14 日後が望ましいとのこと。

 

 

以上の結果から、やはり 14 日間以上の休薬が必要である。

 (ピロリ菌の除菌薬服用後は、抗生剤の影響もあるため尿素呼気検査の実施は 4 週間以上あける必要がある)

 

ついでにピロリ菌の検査方法:

胃カメラを使用した検査方法
①迅速ウレアーゼ試験
②鏡検法
③培養法
胃カメラを使用しない検査方法
④抗体測定
尿素呼気試験
⑥便中抗原測定

 

→個人的には④と⑤の使用頻度が高いと感じている。患者さんの負担が軽いからかな?と思ったら、感度と特異度が共に 95% 以上あるようなので、これが根拠であると考えられる。保険の同時算定も可能なようです。

各検査の大まかな費用は下記サイトが分かりやすいかも。筆者は薬局勤務なので詳細はわからない。

www.pirorikin.com

そういえば「H.pylori感染の診断と治療ガイドライン (2016)」の作成方法については異論もあるようですね。
GRADE を使用していないのと、Minds 2007 を使用しているのが不適切とのことだが、ここの分野については詳しくないので、今後勉強します