論文至上主義をゼロから考える〜その薬の効果はどのくらい?〜

猫好きの猫になりたい薬剤師です。どう医療に関わっていくか等々、薬剤師の一人である自身の感じたこと、考え方を投稿していきます。備忘録的な役割が大きいです。本ブログの記載内容については一切の責任を負えません。原著論文を参照して下さい。また情報の二次利用につきましては各々の責任でお願いいたします。記載内容に誤りがありましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

EBM 実践における4つの輪(Evidence based practice における患者と医師の選択 BMJ 2002:Free)

www.ncbi.nlm.nih.gov

Physicians' and patients' choices in evidence based practice.
Haynes RB, et al. BMJ. 2002.

PMID:12052789

f:id:noir-van13:20170214010737p:plain

"Evidence does not make decisions, people do"

Figure.1 本文より引用

 

⌘ 結論

"エビデンスは意思決定をしない、(意思決定は)人々が行うのだ" というコトバと Figure.1 が全てである。Figure.1 より、エビデンスは 4 つの輪の内の一つであり意思決定には関わるが大部分を占めているわけではないことが分かる。

 

 

⌘ 以下、本文

Evidence based medicine (EBM) に向けられた批判、それは臨床家の手(自由)を拘束し、患者による最適ケア決定に至るための選択肢を奪う点にある。

 

実際に保険・衛生研究を実施するには多くの障壁がある。しかし概念的には臨床家の手を縛り、患者の選択(権)を奪うことは無い。むしろ患者の嗜好は、EBM の初期モデルに組み込まれており、その重要性は 2000 年頃に改訂された Figure. 1 で強調されている。

 

この図における臨床的判断では;

第 1 に、何が間違っていて、どのような治療オプションが利用可能であるかを確立するために、患者の臨床的および身体的状況を考慮(把握)する必要がある。

第 2 に、治療オプションは選択肢の有効性、実効性、効率性に関する臨床エビエンスによって調整される必要がある。

第 3 に、臨床医は各オプションに関連するであろう患者の嗜好性および可能性のある行動(彼あるいは彼女がどのような介入を受け入れる準備ができているかという点で)を考慮しなければならない。

最後に、これらの考察をまとめ、患者が受け入れやすい治療法を勧めるには臨床的専門知識が必要である。

 

いずれの状況においても、患者の臨床状態および状況が優先される可能性がある。例えば、僻地滞在間に胸の痛みを覚える人は、アセチルサリチル酸が唯一の有効な治療薬であれば、これを飲まざるを得ないかもしれないが、より大きなコミュニティ(都会?)では、より多くの治療法がある(一硝酸イソソルビドやニトログリセリン舌下、テープ剤等)。その他の例としては、過去に命にかかわる出血を経験した人のうち、輸血に対し批判的な宗教的信念を持っている人は、代替手段(医療)しか受け入れない可能性が高い。

 

対照的に、エビデンスのみでは意思決定を行えない。したがって、心房細動患者の抗凝固療法におけるエビデンスに基づく決定は、(過去の臨床試験によって)実証された抗凝固効果とその潜在的有害作用によって決定されるだけでなく、個々の臨床状況(例えば、患者の年齢や出血歴)および患者の好みが含まれる。例えば最近の研究では、脳卒中リスク低下の代償として許容され得る出血リスクが、患者毎で大きく異なることが示唆されている。さらに同研究において、ワーファリンまたはアスピリンによる(脳卒中予防に伴う)有害事象の出血に対して、一般的に患者は医療者よりも嫌悪感を示さないことが報告されている。


状況によって、患者によって(意思)決定は異なる可能性があるという概念は、ますます注目されている。
しかし意思決定に影響を及ぼすファクターについて、正しいバランスを取ることは必ずしも容易では無い。実際、患者にエビデンスを提供することで、患者が情報選択することは挑戦的であり、多くの場合、医師-患者間のコミュニケーションにおける現状認識を超えている。最大の課題は新たなエビデンス生成を待つことである。


EBM という用語は、臨床家と患者が意思決定を下す際に現在の最善のエビデンスにとどまることなく、敬意を払うことへの奨励のために開発された。代替用語としては、(より魅力的なものがあるかもしれないが)臨床研究で
強化したヘルスケアです。どちらの用語が適用されても、特に患者の希望が考慮されている場合は、臨床での実践においてエビデンスのより良い利用に自信を持つことができる。

 

⌘ 感想

個々の医療従事者が認識している、あるいは耳にしたことのある臨床試験の結果は極々一部であり、また目の前の患者に完全に当てはまる背景となると皆無に近い。

個々の医療従事者が論文を読むことに加え、患者の嗜好を考慮し、患者の置かれた環境、過去の臨床試験を用い総合的に判断することで、現状もっとも良いであろうと考えられる治療内容の提案、実施が可能ではなかろうか。そこには患者の理解度も重要であり、患者個々に合わせた平易な言葉が求められる。もちろんコンコーダンスという概念に従うのも良いと思う。

新薬ありきではない医療、コストベネフィットやコストパフォーマンスが日本でも注目され、昨年には HTA も導入されました。ここを好機と捉え行動するか現状維持のまま行くのかは個々の判断によります。ただ少なくとも、巷に出回ってるガイドラインの中には不適切なものもあることを知って欲しいし、妄信するのではなく『あくまで推奨』であると捉えて欲しい。

情報は日々アップデートされ、今読んでいる本、ガイドライン、論文は、すでに過去のものであるという研究結果もあるので、こちらについてもブログにアップしていきたいと思います。

私としては、エビデンスは心の拠り所であるとする考えが今のところ一番しっくりくる。