論文至上主義をゼロから考える〜その薬の効果はどのくらい?〜

猫好きの猫になりたい薬剤師です。どう医療に関わっていくか等々、薬剤師の一人である自身の感じたこと、考え方を投稿していきます。備忘録的な役割が大きいです。本ブログの記載内容については一切の責任を負えません。原著論文を参照して下さい。また情報の二次利用につきましては各々の責任でお願いいたします。記載内容に誤りがありましたら、ご指摘いただけますと幸いです。お問い合わせはこちらまで→【noir.van13@gmail.com】

メトホルミンは日本人2型糖尿病患者の血糖をどのくらい低下させますか?(代用のアウトカムですが需要ありますか?シリーズ①)

 

⌘ 背景・疑問

今日までメトホルミンによる 2型糖尿病患者の死亡や心血管イベント発生の抑制効果が示唆されている。またアメリカやイギリスでは、年齢や腎機能に関わらず第一選択薬として位置づけられている。

 

 「果たして日本人での効果はどのくらいなのか?」という観点から、まずは日常業務での薬剤活用を意識し代用のアウトカムであるヘモグロビンA1c(Hemoglobin A1c ;HbA1c)低下作用と 肥満指数(Body Mass Index ;BMI)との関係性について明らかにする。以下の資料を基に ”薬を使う前提” で話を進める。

 

  メトグルコ®(一般名:メトホルミン塩酸塩)の国内承認申請資料  

  試験名:SMP-862の 2型糖尿病患者を対象とした長期投与試験

  (http://www.clinicaltrials.jp/user/cteDetail.jsp

 

 

⌘ 結論

日本人 2型糖尿病患者を対象としたメトホルミンの血糖降下作用は、BMIに関係なく一定の効果を示した。さらに本結果は標準治療への Add-onではなく、メトホルミン単独使用によるものである。しかし小規模試験であるためか各値の標準偏差が大きいことは念頭に置いておく必要がある。また元データは未公開であるため批判的吟味が難しい。

BMI(kg/m2   HbA1c(%)

・  〜19.9 ---   -1.33% (n= 4)

・20.0〜24.9 ---   -1.24% (n= 36)

・25.0〜29.9 ---   -1.38% (n= 28)

・30.0〜34.9 --- -1.19% (n= 8)

・35.0〜     ---     -1.70%(n= 4)

  (※メトホルミン維持量は 1500 mg/日)

 

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⌘ 試験適格基準

<選択基準>
2型糖尿病で以下の基準を満たす患者
・食事療法・運動療法のみで治療中の患者
HbA1cが 6.5%以上 12.0%未満で、4週間以上にわたって安定している患者
・20歳以上 75歳未満の男女
・外来患者
 など

<除外基準>
・肝機能障害患者
・腎機能障害患者
・心血管系、肺機能に高度の障害のある患者、その他の低酸素血症を伴いやすい状態の患者
・乳酸アシドーシスの既往を有する患者
・脱水症の患者、脱水状態が懸念される下痢、嘔吐等の胃腸障害のある患者
 など


年齢: 20歳以上 74歳以下
性別: 男女

 

 

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⌘ 批判的吟味

 P:食事療法・運動療法のみで血糖コントロール不十分な 2型糖尿病患者

 I :メトホルミン塩酸塩 750 mg/日(107例)

    メトホルミン塩酸塩 1500 mg/日(106例)

  (※メトホルミン維持量は 1500 mg/日)

 C:プラセボ群(55例)

 O:HbA1cなど(おそらくサロゲートマーカーのみ)

 T:プラセボ対照二重盲検、並行群間比較、動的割付、14週間の follow-up、施設は日本国内のみ

 

  ランダム割り付けされているか?(観察者バイアスはないか?)

 → されている。動的割付だが詳細な因子は不明。ちなみに今回の場合、HbA1cが対象になっているとマズい。

 

 ブラインドされているか?(マスキングにより観察者バイアスは抑えられているか?)

 → されている。Double-blindだが検査値でバレバレな気はする

 

 隠蔽化されているか?(選択バイアスはないか?)

 →不明

 

 プライマリーアウトカムは真か?明確か?

 →代用のアウトカムだが読み進める。アウトカムとして HbA1cは明確だが、その他は不明

 

 交絡因子は網羅的に検討されているか?

 →不明

 

 Baseline は同等か?どんな患者背景?

 →不明。食事療法・運動療法のみで血糖コントロール不十分な患者ということだけ既知

 

 ITT 解析されているか?

 → 不明だが、HbA1cについてはされていない。

  

 追跡率(脱落)はどのくらいか?結果を覆す程か?

 →憶測でしかないが、メトホルミン群における HbA1cについては、追跡率 68.4%(31.6%)と、脱落が多い印象。 そもそもの解析方法が不明なため、これ以上の検証は行わない。

 

 サンプルサイズは充分か?

 →不明

 

 結果は?

 →上記、結論の項を参照

 

 

 

⌘ コメント

論文を毛嫌いする友人のために始めてみましたが、このシリーズ需要あるのか心配。とりあえず自分用のメモとして継続しようと思います。

 メトホルミンの血糖降下作用について「他の経口血糖降下薬と比較して弱い」と考えている方もいるようですが、それは使用用量が少ないことと、アドヒアランスが低下してしまうことが主な原因であると考えられます。今回の試験の場合、用量 1500 mg/日により BMIに依存せず血糖降下作用が得られています。

 上記の問題については "投薬開始時のコツ" で回避できますので今後、取り上げていきたいと思います(あくまで予定ですw)。

 

   - Evidence never tells you what to do -

95%信頼区間とは何ですか?(統計学ワード①)

⌘ 背景

今更ながら "95%信頼区間" という言葉の定義を自分なりに理解したい。

 

 

⌘ 結論

95%信頼区間とは、95%の確率で母集団の平均を含む区間である。

 

 しかし、より正確には、仮に同じ臨床試験を 100回施行した場合、そのうち 5回くらいの結果は真の値を含まない平均値(点推定)を示す、ということである。

 

 

⌘ 解説

薬の効果と副作用を検討する際、世界中の全人類が臨床試験に参加することは不可能である。年齢や既往歴等の特徴で参加対象を絞ったとしても、その特徴を有す全員が参加することもまた現実的ではない。

 

 ではどうするのか?その問いの一つとして区間推定があげられる(以下のイメージ図を参照)。

 

 

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(点推定と 95%信頼区間のイメージ図)

 

 

 ある薬剤Aについて、評価項目(アウトカム)の発生数(イベント数)を計算しサンプルサイズ(標本数)を予め設定することで、全体(母集団)の平均値を推定しようとする試みである。サンプルサイズは過去の類似研究の結果を基に算出することが多い。

 

 臨床試験の結果は、ハザード比やリスク比、オッズ比 etc. で示される。

 

 例えば、ある臨床試験のハザード比 =1.20 が点推定値であり、その 95%信頼区間 0.78-1.62が区間推定値である。

 

 つまり、ある臨床試験に参加した集団(標本)の平均値は 1.20であり、母集団の平均値、つまり真の値を含んでいそうな区間が 0.78-1.62の範囲内に 95%の確率で存在している、ということである。

 

 より正しくは真の値に対して重きを置くので、100回施行したうちの 5%は真の値を含まない、という表現の方が良いのかもしれない。

 

 上記の解説はややこしいので「ある試験を 100回やったら 95回は同じ結果になるよ」で何ら問題ないと個人的には思う。

 

 

⌘ 参考資料

1. いまさら誰にも聞けない医学統計の基礎のキソ 第1巻 まずは統計アレルギーを克服しよう! ISBN-10: 4904307240、ISBN-13: 978-4904307243(発売日: 2010/4/10)

 

情報リテラシーを学び、実践し、振り返る 〜立てよ、薬剤師〜

またまた雑記

 

6月頃から暖めていた内容を AHEADMAP会報誌秋号に寄稿しました!!

aheadmap.jimdo.com

 

 

奇しくも、ある方と一部内容がかぶりました。その方、「るるー主」さんのブログがこちら↓

ph-lelouch.com

 

 

私は常々、日常業務に Evidence-Based Medicine(EBM)実践を組み込みたいと考えています。

 

 

そして医療従事者以外にも EBM実践を広めるためには、つまり "一般化する" にはどのようにしたら良いかと考えております。

 

 

それには「情報を発信する側」と「情報を受け取る側」、双方のリテラシー向上が肝であるという考えに至りました。

 

 

そもそも "リテラシー literacy" とは何か?以下、デジタル大辞泉から引用↓

 

リテラシー(literacy)

1 読み書き能力。また、与えられた材料から必要な情報を引き出し、活用する能力。応用力。
2 コンピューターについての知識および利用能力。→コンピューターリテラシー
3 情報機器を利用して、膨大な情報の中から必要な情報を抜き出し、活用する能力。→情報リテラシー

 

 

上記3の情報リテラシーの定義は 1989年に確立されています。以下のサイトで原文を一部翻訳していますので、ご興味のある方は是非ご訪問ください。

blog.livedoor.jp

 

 

 

個人的に感じていることですが情報発信を行っていく中で、自然と情報を受け取る際にも内容を吟味できるようになりました。まだまだ修行中の身ではありますが、継続することで新たに見えてくる景色があるのではないかと期待しております。

 

 

つまり受け取る情報を吟味するためには、一次情報に当たり、自分なりに咀嚼し、情報を発信し続けて行くことが肝要ではないか、

そして情報リテラシー取得に繋がるのではないか、ということです。

 

 

あとは初めの一歩を踏み出すかどうか、、、

 

 

 

 

 

立てよ、薬剤師

薬はどのくらいで安定した効果が得られ、どのくらいで体内からなくなりますか?(JAGS. 1976; Charge)

修正履歴:7.6時間→7.6日(2017.10.25ご指摘ありがとうございます!)

 

⌘ 疑問

薬はどのくらいで安定した効果、つまり定常状態に達するのか。そして、どのくらいで体内から消失するのか。

 

 

⌘ 結論

Ritschel(リッチェル)理論に基づくと、定常状態に達する薬の場合、半減期の 5倍の時間で反復投与により定常状態に達する。従って、服薬中止により半減期の(4〜)5倍の時間で体内から消失する。

定常状態に達する薬は、下記の式で 3以下を示す。

 

 

f:id:noir-van13:20171025001758p:plain

 

 

⌘ 実例

健常成人が アムロジピン口腔内崩壊錠 5mg(1日 1回)

服用の場合、

 

  投与間隔 = 24 (時間)

  半減期 t1/2 = 36.5±4.2 (時間)

 

STEP 1:定常状態に達する薬であるか?

 投与間隔 24 / 半減期 36.5 = 0.657...

    ≦ 3であるためアムロジピン定常状態に達する薬。

 

STEP 2:どのくらいで定常状態に達するか?

  36.5 × 5 = 182.5

    つまり毎日服用すると 7.6日で定常状態に達する。

 

 

ちなみに、申請時の資料ではアムロジピン錠 2.5mgを 14日間反復投与した場合、プラトーに達したのは 6日目以降(添付文書を参照)。

 

 

ちなみに理論上、上記の式で解決できない薬剤もあります(membrane approach など)。こちらについては、そのうち記事にしたいと思います。

あるいは参考文献の2を読んでみると良いかと思います。

 

 

⌘ 参考文献: 

1.Ritschel WA. Pharmaco-kinetics approach to drug dosing in the aged. Journal of the American Geriatrics Society 24; 344-354: 1976. 

2.山本雄一郎  薬局で使える実践薬学(通称:鈍器)日経BP社 (2017/3/2) ISBN-10: 4822239616.  ISBN-13: 978-4822239619

 

3.ノルバスク錠  添付文書(最終アクセス日:2017年10月23日)

Up-To-Date Evidence of DPP-4 inhibitors(Last UpDated: OCT 14th, 2017)

⌘ 背景

経口血糖降下薬である DiPeptidyl Peptidase-4 inhibitors(DPP-4阻害薬)のオマリグリプチンの非劣性ランダム化比較試験の結果が発表された(2017年)。これまでに発表されているアログリプチン(EXAMINE)、サキサグリプチン(SAVOR-TIMI53)、そしてシタグリプチン(TECOS)の結果も併せまとめておく。

 

 

⌘ 疑問

DPP-4阻害薬は 2型糖尿病患者における心血管アウトカムを抑制できるか。

 

 

⌘ 結果

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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=23992602

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=23992601

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=26052984

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=28893244

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=25765696

(表1. 各論文より作成  —  プライマリーアウトカムは 3-point MACEである心血管イベントのみ) 

 

 

⌘ コメント

倫理的観点から非劣性試験ばかりである。またプライマリーアウトカムである心血管イベントにおいて、プラセボ薬に対する非劣性は証明されたが優越性は示されていない。しかしメタ解析では心血管イベント発生に対する抑制効果が示唆されているものもある(後日アップ予定)。

 

 血糖降下作用は、インスリンやスルホニル尿素薬に比べマイルド。そのため単独使用では低血糖症状をほぼ引き起こさないようだ。

 

 FDAやEMAから課せられた課題はクリアしている。しかし真のアウトカムへの効果は不明。あとは誰に使うのか、真の課題は薬剤使用の個別化ではなかろうか。

エビデンスは "ナマモノ" である 〜AHEADMAP会報誌夏号〜

今回は雑記です。論文の批判的吟味ではありませんw

 

 

一次情報に触れることの重要性について AHEADMAP 会報誌夏号に寄稿しました!!

 

 

2型糖尿病の治療を例に、前提を疑うことや論文情報について紹介しています!(18ページを参照)

 

aheadmap.jimdo.com

(もう3ヶ月くらい前です。そうですか、もう3ヶ月経ちましたか・・・)

 

 

AHEADMAPとは Association for Appropriate Healthcare Decision-making and Practice の略のようです。

 

で、これは何か?何をしているのか?

 

まず以下の基本理念を参照されたい。

 

 

Connect the New

エビデンスと人と、人と人とを繋ぎ、新しい価値と幸せを紡ぐ未来への地図〜 

 

 

 

具体的には日常業務で Evidence-Based Medicine(EBM)を実践するために、また EBMという言葉が世の中から消え、当たり前の行動様式となるよう活動している チンドン屋!!(だと勝手に思っています)

 

 

私としては「新しい価値観の獲得」や「自身を俯瞰する」ために本会員として活動に参加しています。

 

 

ご興味のある方は是非、上記サイトからアクセスしてみて下さい♪

 

 

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私が論文に触れ、EBMを実践するためのきっかけを下さった方に本稿を捧げます。

薬剤師の未来に幸あれ

カナグリフロジンは 2型糖尿病患者の心血管・腎イベント発生を抑制できますか?(CANVAS program; NEJM 2017; Free→charge)

Canagliflozin and Cardiovascular and Renal Events in Type 2 Diabetes.

 

N Eng J Med. 2017 Jun 12. doi: 10.1056/NEJMoa1611925. [Epub ahead of print]

Neal B et al.

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

PMID: 28605608

ClinicalTrials.gov No.: NCT01032629(CANVAS), NCT01989754(CANVAS-R)

 

【資金提供】

Janssen Research and Development

 

【利益相反COI or 開示disclosure】

http://www.nejm.org/doi/suppl/10.1056/NEJMoa1611925/suppl_file/nejmoa1611925_disclosures.pdf

 

【統合解析方法のペーパー】

Optimizing the analysis strategy for the CANVAS Program: A prespecified plan for the integrated analyses of the CANVAS and CANVAS-R trials. - PubMed - NCBI

PMID: 28244644

 

 

⌘ 結論

カナグリフロジンはハイリスク 2型糖尿病患者の心血管および腎イベントを抑制した。ただし日本での承認用量と異なる点、セカンダリアウトカムであっても下肢切断のリスク増加については慎重に検討する必要がある。従って同クラスの他の薬剤より優れているとは言いがたい。

 

 

⌘ 背景

カナグリフロジン(商品名:カナグル)は、糖尿病患者の血糖値、体重、およびアルブミン尿を減少させるナトリウム - グルコース共輸送体2(SGLT-2)阻害剤である。
心血管、腎臓、および安全性アウトカムに対するカナグリフロジン治療の効果を報告する。本論文は、CANVASおよび CANVAS-Rという 2試験の統合結果である。

 

 

⌘ RobotReviewerによる Risk of Bias Table

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⌘ PICOTS

P: 心血管ハイリスク 2型糖尿病患者(罹患期間は平均 13.5 ± SD7.8年

組入基準:HbA1c 7.0~10.5%の 2型糖尿病の男女、30歳以上で症候性アテローム性心血管疾患を有しているか 50歳以上で心血管疾患リスク(糖尿病罹患10年以上、収縮期血圧 140 mmHg以上で降圧薬を 1つ以上使用、喫煙、微小アルブミン尿あるいは顕性アルブミン尿、あるいは HDLコレステロール 1 mmol/L=38.7 mg/dL未満)を 2つ以上有す患者、eGFRが 30 mL/min/1.73 m2以上 etc.

除外基準:糖尿病性ケトアシドーシスの既往、1型糖尿病あるいは膵細胞移植、膵炎あるいは膵臓切除による糖尿病、スクリーニング前に治療薬および用量が少なくとも 8週間安定していない患者、ベースライン/Day1時の空腹時血糖 270 mg/dL(15 mmol/L)超あるいはスルホニルウレア剤またはインスリン使用中の患者の場合は空腹時血糖 110 mg/dl(<6mmol/L)未満、スクリーニング前 6ヶ月間に 1回以上の重症低血糖の既往 etc.

I :標準治療へのカナグリフロジン(商品名:カナグル)追加

CANVAS trial

→ カナグリフロジン 300 mg/day、100 mg/day、placeboの 3群

CANVAS-R trial

→ カナグリフロジン 100 mg/day(12週以降 300 mgまで増量可)の 2群

 ※300mgまで増加した患者は71.4%

 ※日本での承認用量は 100 mg/dayまで(2017年9月時点)

C: 標準治療への Placebo追加 

O: Primary --- 心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合

  Secondary --- ①全死亡、②心血管死、③アルブミン尿の進行(30%以上のアルブミン尿の増加および、正常アルブミン尿からの微小アルブミン尿あるいは顕性アルブミン尿への増悪、微小アルブミン尿からの顕性アルブミン尿への増悪)、④心血管死および心不全による入院の複合

T: 予防・治療、ランダム化比較試験、追跡期間 =188.2週(3.9年)

S: アジア-太平洋、北アメリカ、ラテン系アメリカ、ヨーロッパ諸国、その他

    30ヵ国、667施設(少なくとも約20%がアメリカから参加と推定)

 

 

ランダム割り付けされているか?(観察者バイアスはないか?)

→ されている。Interactive Web Response System(IWRS)を採用

 

 

⌘ ブラインドされているか?(マスキングにより観察者バイアスは抑えられているか?

→ されている。Double-blindだが検査値でバレバレな気はする(本文 Figure 1A参照)。2週間の run-in期間は single-blind(患者のみ)

 

 

⌘ 隠蔽化されているか?(選択バイアスはないか?)

→Concealmentの記載はないが、IWRSを採用していることから隠蔽化されていると判断(中央割付)。トライアルスポンサーであるヤンセンが実施しているところが少し気になる(気にしすぎ?)

 

 

⌘ プライマリーアウトカムは真か?明確か?

→ 真であるが複合であるため結果の解釈に注意が必要

 

 

⌘ 交絡因子は網羅的に検討されているか?

→ 概ねされている

 

 

⌘ Baseline は同等か?どんな患者背景?

→ 同等と判断。心血管疾患既往が 65.6%とハイリスクな集団であると考えられる。利尿薬の使用患者が 44.3%という点が個人的には気になる。内訳も知りたい。

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 (Table 1. 本文より引用)

 

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 (Table S4. Supplementary Appendixより引用)

 

 

⌘ ITT 解析されているか?

→ されている。

 

 

⌘ 追跡率(脱落)はどのくらいか?結果を覆す程か?

→ ITT解析であるため追跡率100%

試験完遂率はカナグリフロジン群 96.1% vs. placebo群 95.7%と同等

脱落は全体で4.19%(184+224 / 4163+5571)と問題なさそう。

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(Figure S2. Supplementary Appendixより引用)

 

 

⌘ サンプルサイズは充分か?

→ 心血管セーフティ検討のために 688例のイベント発生が必要(β =90%パワー、αレベル =0.05)。しかしプライマリーアウトカムのイベント発生数は、CANVASでは 658(425+233)と足りず、CANVAS-Rを合わせた CANVAS program全体としては 1,011と充分。

 

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  (Table S6. Supplementary Appendixより一部引用)

 

→当初の計画では、CANVAS試験のみで 18,000例を予定していたが、第一段階の組入れ後に試験スポンサーが第二段階の被験者募集を中止することを決定した。そこで代替案として、アウトカムを腎臓病等に変更し、イベント発生抑制効果を検討する CANVAS-R試験を新たに計画した。

 

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(Study Design Figures. Major study heralds new era in treatment of type 2 diabetes: CANVAS results available | The George Institute for Global Healthより一部引用)

 

 

⌘ 結果は?

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 (Figure 2A. Primary Outcome;本文より引用)

3-Point MACE

 ハザード比 =0.86(95%CI  0.75〜0.97

 P <0.001(非劣性)

 P =0.02(優越性)

 

 

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(Additional Figure 1. Primary Outcome発生数および追跡期間;本文より作成)

 

 

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(Additional Figure 2. プライマリーアウトカムのNNTB; 本文より作成)

 

 

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*NNTB: Number Needed to Treat for Benefit
**NNTH: Number Needed to Treat for Harmful
***MACE: Major Adverse Cardiovascular Events

(Additional Figure 3. 本文より作成)

→プライマリーアウトカム、セカンダリーアウトカムの一部について、リスク比は増加した。個人的には驚愕の結果です。イベント発生率は両群で同程度なのに、ハザード比においてカナグリフロジン群はプラセボ群に比べ有意に低下。ちなみにですが EMPA-REG OUTCOMEでは、ハザード比(追跡期間を考慮)とリスク比(ある時点の値)は同じぐらいになります。気になる方は是非、算出してみてください。

 

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(Figure 3. 本文より引用)

アルブミン尿の進行

 ハザード比 =0.73(95%CI  0.67〜0.79

→eGFRの 40%低下、腎移植、腎不全

 ハザード比 =0.60(95%CI  0.47〜0.77

 

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  (Table 2. 有害事象; 本文より引用)

 

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*NNTB: Number Needed to Treat for Benefit

**NNTH: Number Needed to Treat for Harmful

 (Additional Figure 4. 安全性アウトカム;本文より作成)

→優位差のあった項目のみ記載。イベント発生数は不明。

 

 

⌘ 考察

はぁ〜、ドラクエ11クリアしちゃったのでブログ更新しちゃいました。ドラクエloss。いやはや、結果の解釈に自信が持てません。試験結果は正しいのか否か。

   プライマリーアウトカムのイベント発生率がプラセボ群と同じ(Additional Figure 3参照)なのに、なぜ no. of participants per 1000 patient-yr では、カナグリフロジン群の方が低くなっているのか(Figure 3参照)。CANVASCANVAS-Rそれぞれの追跡期間で補正してみましたが解明できませんでした(Additional Figure 2参照)。ここの部分、分かる方いらっしゃいましたら是非ともご教授願いたいです。

 NNTB =218は no. of participants per 1000 patient-yr から算出していますので、そもそもの値が誤っている場合、意味をなさなくなります。あとセカンダリであっても下肢切断については留意した方が良いと考えます。一応、プライマリーアウトカムNNTB =218だとすると下肢切断リスクよりもベネフィットが上回ります。しかし同クラス薬はエンパグリフロジンがありますので、カナグリフロジンを選択する必要性は無いと個人的には思いました。

 SGLT-2阻害薬の大規模臨床試験としては、ダパグリフロジンの DECLARE-TIMI58試験(Multicenter Trial to Evaluate the Effect of Dapagliflozin on the Incidence of Cardiovascular Events - Full Text View - ClinicalTrials.gov)が進行中です。Follow-upは 6年を予定しています。何気に楽しみ。

 

  

⌘ 追加情報

  Normoalbuminuria:尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR*)が 30 mg/g未満

  Microalbuminuria:ACRが 30~300 mg/g

  Macroalbuminuria:ACRが 300 mg/g超

  *ACR=Albumin Creatinine Ratio